離婚協議書は必要ですか?
協議離婚は、単に「離婚の合意」と「親権の合意」があれば離婚が成立します。これは、日本人同士の離婚でも、日本人と外国人の離婚で同じです。そして、離婚届を提出してさっさと別れたいと思う人は、とても多いと感じています。特に、自らの権利を強く主張してこれ以上の争いになるのを避けたいと思う人は多く、色々な取り決めを行うのは嫌だという気持ちは、よく分かります。また、相手から、「養育費を払うならば、親権をよこせ!面会交流させろ!」などの要求を突き付けられそうだと思って、自分の生活が苦しくても我慢してしまうケースがあるように思います。
離婚協議書を作成することのメリット
離婚後に金銭的なやり取りがない場合は、離婚協議書で大丈夫です。ただし、離婚時に養育費や財産分与、慰謝料等の金銭的な契約をして、それを確実に支払ってほしいときには、「離婚給付等契約公正証書」を作成します。もし、離婚協議書だけを作成して、実際には何も払ってもらえないのでは、頑張って作っても無駄になりますから。
- 二人の間に(間接的にでも)コミュニケーションが取れる状態であり、離婚協議書作成時にお互いがなんとか協力できる。
- 離婚すること、親権はどちらにするか、既に合意している
- 養育費や財産分与、慰謝料等の総額の支払い金額について合意できる
- 月額の支払い金額又は分割する場合の支払い期間と回数について合意できる
- 面会交流等を希望している場合は、頻度や回数に合意できる
当事務所は残念ながら(?)行政書士事務所なのでね。当事者の一方の主張だけを私が代弁することはできません。(弁護士法違反になります) ただ、あなたと相手の双方から、契約書として作成してほしいとお願いされ、2人に合意する意思があれば受任することは可能です。契約書の作成自体は、行政書士として認められている仕事だからです。
「離婚給付等契約公正証書」に書く内容は何ですか?
離婚給付等契約公正証書に、主に書く内容は以下の通りです。
- 双方が離婚に合意したこと
- 親権者の決定(子どもの親権をどちらにするか)
- 養育費 (未成年の子どもに対し、監護していない親が支払うお金)
- 面会交流(監護していない親が、子どもに会う時の取り決め)
- 慰謝料 (不倫や暴力等に対するお金)
- 財産分与(婚姻後の夫婦の財産を清算する)
- 年金分割に対する合意(年金をどのように分けるか)
- 通知義務(住所、勤務先等を変更した場合は、互いに通知する)
- 清算事項(この協議書以外のお金を請求しない)
- 強制執行認諾(お金の支払いがない、遅延しているときには、強制執行に服する)
強制執行認諾とは、なんですか?
相手とあなたが、子どもの養育費を一人当たり月額○万〇千円と契約書で決めたにもかかわらず、全く支払ってくれないとします。その時に、裁判所が相手の銀行口座を差し押さえて、強制的に支払うようにさせる制度のことを、「強制執行」と言います。銀行通帳に差押と書かれて、いきなりその分の金額が引き落とされます。
このような強い力を契約書に持たせるためには、「強制執行認諾」の条項を入れる必要があります。そしてこれは、公証役場による公正証書にしか入れることができません。
第〇条
『本契約書に記載の債務履行を遅延した時は、直ちに強制執行に服する旨を陳述した』
離婚給付等契約公正証書の末尾にそっとある一文ですが、ものすごくパワーのあるものです。
民法の一部を改正する法律について
令和6年5月17日に、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)が成立しました(同月24日公布)。そして、この法律は2年を超えない範囲内で施行されることが決まっています。つまり、令和8年5月頃には、実施されることになります。
この法律においては、施行日より共同親権(父母いずれも親権者である)と単独親権(父母のどちらか一方が親権者である)のいずれかを、選択できるようになりました。また、養育費の取り決めがない場合、「法定養育費」を請求できるようになります。
このような制度がどこまで国際離婚において運用されるのか、まだ分かっていませんが、準拠法が日本法になる離婚において適用されると思われます。具体的な内容が分かったら、少しずつ説明していきたいと思いますので、関心がある方はもう少しお待ちください。
民法の一部を改正する法律の概要
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