国際離婚の方法

国際離婚で、調停の申立てができるかどうかを、検討する

調停離婚

その国際離婚は、日本で手続きができますか?

国際離婚における、離婚届の提出による離婚(=協議離婚)」は、以下のように、あなたや相手の国籍によりできない場合があることを、説明しましたね。
相手が離婚や親権に反対し、そもそも離婚届が書けない場合
国籍の違う外国人で、在留期間が足りない場合
国籍の同じ外国人で、その国の法律において、協議離婚の制度がない場合
このような場合は、離婚届を作ったとしても、受理してもらえません。離婚届の受理は、協議離婚の制度がある国でのみ、成立するからです。

でも、その国際離婚を諦めてしまうのはいくらなんでも早すぎます。日本には、調停や裁判をすることで、離婚を成立させる制度があります。外国人でも(あなたではなく)“相手”が日本で生活していれば、このような日本の裁判制度を使うことが十分に可能です。

裁判制度を使って離婚ができるかどうかは、日本の裁判所がその調停や裁判を行う管轄権があるかどうかにより判断します。これを、国際裁判管轄といいます。

国際裁判管轄が日本にあるかどうか?

家庭裁判所で調停を行うとき、あなたは裁判所に行くでしょう。ただ、相手が裁判所に来ることができなければ、そもそも、調停や裁判を行うことができません。そのために、相手が日本のどこに住んでいるか分かっていて、相手が裁判所と連絡を取り、実際に調停や裁判が行われる日時に裁判所に来ることができなければなりません。

また、調停はあなたの家の近くの家庭裁判所ではなく、相手の住んでいる住所や居所を管轄する家庭裁判所に申立てるのが原則です。

日本で離婚調停を申立てできるのは、以下の3パターンです。

パターン1)相手が日本に住んでいる (家事事件手続法3条の13)

相手が日本人だろうと外国人だろうと、相手が日本に住んでいる時には、日本で離婚調停ができます。相手が外国人で3カ月以内の在留しか認められていない場合や、不法残留の場合は日本に住所がないのですが、今住んでいる場所(居所といいます)が日本にあれば、それでも調停や裁判ができます。

 

パターン2)夫婦としての最後の共通の住所が日本である。あなたは日本にまだ住んでいるが、相手は別居した後に外国に帰ってしまった。(人事訴訟法3条の2 6号)

日本で一緒に夫婦として生活していたが、相手が勝手に外国に帰ってしまった場合です。ただ、申し立て自体はできますが、調停が成立するのは難しいでしょう。相手は、あなたと離婚するために、わざわざ海外から飛行機に乗って、日本の裁判所に来ますか??

 

パターン3)あなたは日本に住んでいるが、相手が行方不明になってしまった。又は、日本の裁判所で裁判をすることに、特別な事情があるとき(人事訴訟法3条の2 7号)

相手が勝手に外国に行った後に、行方不明になり、全く連絡が取れなくなってしまった。そのまま、何年も何年も離婚できないのでは、さすがにあまりにも、あなたに不利益です。そのようなケースを救うために、この条文はあります。
ただ、パターン2と同様に、相手が調停に来ることはないでしょう。そもそも、行方不明なのですから、連絡のしようがない。

離婚調停を申立てできないのは、以下の2つの場合です

パターン4)夫婦としての最後の住居地が、外国である。その後も、相手は外国にいる。

日本人と外国人が外国で生活したあとで、日本人のあなた(とその子)だけが日本に帰ってきた。相手は絶対に離婚しないという。どうしたら離婚できるだろうか?? という相談だけは、残念ですが、日本で離婚の手続きを行う手段がありません。
外国の裁判所で離婚裁判を行うか、頭を下げてでも、もう一度離婚届にサインしてくれるように頼むか、どちらかしかやりようがないのが正直なところです。

 

パターン5)日本に生活するフィリピン人同士の夫婦である

相手が日本に住んでいれば、どこ国籍でも離婚できると書きましたが、フィリピンだけは違います。なぜか??
フィリピンの法律で、離婚に関する法律がありません。法律がないので、離婚する手段がないということです。この場合は、フィリピン人弁護士に依頼し、フィリピン国内でアナルメントという、婚姻無効の手続きを行います。
なお、一方がフィリピン人、もう一方が日本人、又は、フィリピン以外の外国人の場合は大丈夫です。日本法が準拠法になりますから。

まとめ

自分の住所 相手の住所 合意 調停による離婚、裁判離婚
パターン1 問わない 日本 なし 調停⇒できる
裁判⇒できる
パターン2 日本 外国 なし (夫婦の最後の住居地が日本の場合)
調停⇒できるけれど、成立しない
裁判⇒できる
パターン3 日本 行方不明 なし 調停⇒できるけれど、成立しない
裁判⇒できる
パターン4 日本 外国 なし (夫婦の最後の住居地が外国の場合)
調停⇒できない
裁判⇒できない

そもそも合意が得られずに、離婚届にサインしてもらえない場合でも、相手が日本で生活していれば、調停や裁判で離婚することができます。

また、離婚届による離婚(協議離婚)では、あなたと相手のどちらかが日本人かどうか、または同じ国籍かどうかで、離婚できたりできなかったりするのと違って、調停や裁判はあなたや相手の国籍を問いません。そのために、日本に住む日本人や外国人など、誰もが利用できます。つまり、同じ国籍の外国人夫婦の離婚で、協議離婚制度がないような国の人も、調停による離婚ならば可能です。

え!! だって、同じ国の人同士の離婚は、その国の法律を使うのでは??と思った方。
調停や裁判は、どの国の法律を使うか? で説明します。

参考資料
日本の裁判所の離婚調停や離婚裁判において、日本の裁判所に管轄権があるかどうかは、「家事事件手続法」及び「人事訴訟法」により定められています。参考として、条文を添付します。

家事事件手続法
(家事調停事件の管轄権)
第三条の十三 裁判所は、家事調停事件について、次の各号のいずれかに該当するときは、管轄権を有する。
一 当該調停を求める事項についての訴訟事件又は家事審判事件について日本の裁判所が管轄権を有するとき。
二 相手方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
三 当事者が日本の裁判所に家事調停の申立てをすることができる旨の合意をしたとき。
(以下略)

人事訴訟法
(人事に関する訴えの管轄権)
第三条の二 人事に関する訴えは、次の各号のいずれかに該当するときは、日本の裁判所に提起することができる。
一 身分関係の当事者の一方に対する訴えであって、当該当事者の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
二 身分関係の当事者の双方に対する訴えであって、その一方又は双方の住所(住所がない場合又は住所が知れない場合には、居所)が日本国内にあるとき。
(省略)
六 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、当該身分関係の当事者が最後の共通の住所を日本国内に有していたとき。
七 日本国内に住所がある身分関係の当事者の一方からの訴えであって、他の一方が行方不明であるとき、他の一方の住所がある国においてされた当該訴えに係る身分関係と同一の身分関係についての訴えに係る確定した判決が日本国で効力を有しないときその他の日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を図り、又は適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき。

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