慰謝料、財産分与、婚姻費用分担請求について
相手が不倫した時に慰謝料が請求できることは、日本にいる私たちにとっては当たり前のことと思っています。
しかしながら、これは「日本独自」のルールであり、この様な概念がない外国人が多いです。
もちろん、日本で離婚を成立させるうえで、日本法を使用するならば外国人の彼に請求できます。
しかし、説明するにも理解させるにも、日本人と異なり非常に苦労します。これは国際離婚特有の難しさだと思います。
慰謝料について
慰謝料とは、浮気や不貞行為、DVなどで「精神的な苦痛」を被った場合に、相手に対して請求する金銭のことです。
つまり、相手の行為が「違法行為」であることが前提です。
日本では、結婚している時に不貞行為をしたら違法行為です。
その為、慰謝料を請求することができますが、この「慰謝料」の考え方は、各国によって異なります。
慰謝料の概念がない国が多い
相手の国にもよりますが、慰謝料という概念がない国があります。
ネパールでは、2018年の民法改正により重婚が禁止されました。現在は、結婚後の他の女性との性行為(不倫)は、裁判で離婚できる要件となっています。しかし、不倫に慰謝料等の金銭的なやり取りが生じるような法律にはなっていません。
また、アメリカ、フランス、ドイツなども「慰謝料」の概念がありません。ドイツでは、「失われた愛の慰謝料は存在せず・・・」という格言まである。
このような制度を持つ国の彼に「不倫を理由とする慰謝料等の請求」しても、意見が対立するだけだと思います。
財産分与について
慰謝料という概念がなくても、ネパール法においては、離婚時に「家族財産の分割」により夫からまとまった金銭を貰うか、又は離婚後の生活費の支給を請求することができます。
また、アメリカ、フランス、ドイツなども、収入が多い方が少ない方に対し、生活レベルが極度に下がらないよう金銭的なサポートをする仕組みがあります。
従って、結婚後に夫婦で築いた財産があれば、その財産の分割を請求することは出来ます。
どんなものが財産分与になりますか?
結婚している時に、夫婦で作った財産(=夫婦共有財産)ならば、分与されます。
- 預貯金(夫婦片方の名義でも、分与の対象です)
- 不動産(自宅の土地や建物など)
- 車
- 家具や家財など
- 有価証券、保険金解約金、退職金など
なお、結婚前より片方が持っていた財産や、結婚中に片方が受けた相続財産等は、財産分与をする必要がありません。
ちなみに、ネパール法においては、「家族財産の分与」を行います。夫婦で財産を半分ずつ分け合うのではなく、家族のメンバー全てが家族財産の権利を持つため、その家から出ていく人の人数によって分割される割合が異なります。
ネパール法を日本で適用することはないですが、この様に全く異なる離婚の法律が各国にあることを、理解しておくことは必要だと思います。
婚姻費用分担請求について
婚姻費用分担請求とは、別居時から離婚に至るときまでの生活費の支払いを、収入が高い側に請求することです。
生活費は夫婦で負担することとなっているため、請求を拒むことは出来ません。
別居していなくても、相手から生活費を貰えない場合は、請求が可能です。
まとめ
国際離婚において「慰謝料」の概念がない国があることをまずは分ったうえで、何をするかを考えた方がスムーズにまとまります。
ただ、慰謝料の制度がないからと、全く何も貰わずに離婚してしまう国は、逆にほとんどありません。離婚の上で収入が多い方から少ない方に財産を譲り渡すことは、どの国でも普通に行われていることです。
だからこそ、「解決金」等の名目にして、財産分与と一括した中に慰謝料請求分を上乗せするなど、相手が理解できる枠組みの中で、それでもしっかりと金銭的な請求を行っていくことが大切だと思っています。
次回は、彼の国で離婚を成立させる方法、です。